今回のご相談は【勝手に処分された遺産について】です!

ご相談内容

【昨年、父が他界しバタバタしていたため遺産のことはとくに家族間で相談することもなく、月日が流れておりました。先日、家族が揃いましたのでやっと遺産についての話し合いをしたら、兄がすでに預金を自分の口座に移して使っていることが判明しました・・。どうしたら良いでしょうか】

そもそも遺産分割協議対象の財産とは?

そもそも遺産分割協議の対象となる財産とは、どのようなものが入るのでしょうか

原則、遺産分割協議の対象財産は【相続開始時に被相続人に属しており、かつ、遺産分割協議時にも存在する財産】が対象となります。

そのため、遺産分割協議前に共同相続人の1名が財産を勝手に処分した場合は、遺産分割協議時には存在しないので原則としては遺産分割協議の対象財産ではないことになります。

ですが、これでは勝手に処分した人が得をするので、相続人間で不公平が生じてしまいます・・

そのため、実務上では共同相続人が合意すれば、その財産を存在するものとして協議の対象としてきました。

今回の民法改正で(令和元年7月1日施行)この問題の解決がさなれました。

新しい改正法では、明文化に

改正後民法(906-2-1)では遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人は、その全員の同意により、当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するとみなすことができる、と規定しました。

尚、この共同相続人全員の同意の全員には【勝手に処分した相続人】は入らず、その者の同意は不要です。

ちなみに、ここで対象となるのは処分された財産そのものであり、財産を処分して得た金銭などではないことをご注意ください。(不動産を売却して得たお金など)

預金の払い戻し(改正民法909)はどうなるの?

同じく改正された民法の中に【遺産である預貯金については、家庭裁判所の判断を得ることなく法定相続分の3分の1まで払戻できる】※上限150万円 というものがあります。

当該払い戻しも、他の共同相続人の同意はいらないため分割前に処分された財産には該当しますが、この場合は、遺産の一部分割により取得したとみなされ、その分だけ残余財産の分割時に取得できる財産が少なくなります。

(そのため、上記の勝手に処分した財産とは異なりますのでご注意ください。)

処分した財産が、自己の相続分を超えていたらどうなるの?

例えば以下のような場合です

  • 法定相続人→妻・長男・次男
  • 遺産→不動産(評価1000万円) 絵画(5000万円)
  • 内容→長男が、勝手に絵画を処分した(売却など)

このような場合はどうなるでしょうか。

上記の場合、3人の法定相続分は【妻 3000万円 長男・次男が1500万円ずつ】になります。

なので長男は2500万円も多く、財産を処分したことになります。

この場合は【自己の法定相続分を超えて財産を処分した】となり、無権限により原則無効となります。よって、当然に遺産分割協議の対象財産になります。

亡くなったことを銀行に通知せずに、預金を使ってしまった場合

よくあるのが、このような銀行預貯金を処分してしまうという内容です(勝手に下ろすなど)

これは、法律上【準占有者に対する弁済】といい、簡単にいうと【銀行が準占有者(通帳などを持参した相続人)に下ろす権限があると信じたことに責任はない】というようなことです。

そのため行為そのものは有効となりますが、共同相続人全員の同意(処分した人を除く)により、遺産の分割時に遺産として存在するとみなすことができるので公平性は維持されます。

まずは専門家に相談しよう!

このように、遺産分割協議は奥が深い法律行為です。

一度遺産分割協議を行うとなかったことにするのは、とても大変な作業になります・・・。

上記のようなお悩みのある方はまず、専門家に相談しましょう。

当事務所は、365日相続相談を受け付けております。まずはお気軽にご相談ください!